SSブログ

レ・ミゼラブル/悲惨な人々 [生活]

本日6月17日はミュージカル『レ・ミゼラブル』の日本30周年記念日。

この1週間、帝国劇場では日替わりで歴代キャストが登場するスペシャル・カーテンコールが行われ、今日は盛大なパーティーが催されたそうです。
残念ながら私は参加できませんでしたが、『レ・ミゼラブル』を通して知り合った友人たちが投稿する写真を見て懐かしい思いに浸っていました。

初めてアンサンブルとして参加した1994年。楽屋に帰る暇もなく、早変わりの連続で演じた多数の役は殆どが貧しき人々。プリンシパルと呼ばれる役はありますが、『レ・ミゼラブル』のタイトルロールはそういう貧しき人々です。

ユーゴーが描いた虐げられた人々、悲惨な人々、Les Miserables。

ここ数ヶ月の間にイギリスは数々のテロに見舞われ、数日前には公営住宅の大火災で多数の人々が命を落としました。

テロは狂信的な人の非人間的行為、火災は政府の住宅管理や改装会社の杜撰さが原因、と怒りを込めて言うことは簡単です。
でも、なぜか自分を責める気持ちを止めることができません。

保守的な政府の排他的な外交、富裕層優遇の内政、それを許してきたのは主権者であるイギリス国民です。自分は現政権を支持していないから許される、という単純なことでは決してなく……

世界で孤独を感じている少数派の虐げられた人々、安全ではない場所に住むことを余儀なくされた貧しい人々。何かが起きてからそういう人々の存在に思いを寄せるのでは遅すぎるのよ、という内なる声。
そう、自分の怠惰さへの罪悪感です。

イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領誕生と続き、世界は保守化・右傾化していく一方か、と危惧した2016年。

今年に入って行われたオランダとフランスの総選挙で、その傾向が薄れたように見えたなか、突然メイ首相によって宣言されたイギリスの解散総選挙。

これはEU離脱後にイギリスという国がどこに向かおうとしているのかを知る絶好のチャンスでした。

結果、保守党はメイの期待を裏切って議席数を減らし、ジェレミー・コービン率いる労働党が議席数を大幅に伸ばしました。

コービンは、ここ何年ものあいだ(保守派の支持を獲得しようと)中道どころか右に近づいていた労働党を、大きく左に振り戻して逆に支持を増やしています。

労働党党首選の際、大学の無償化・福祉の向上と言うのは簡単だけれど財源は?と問われ、核兵器なんて作らなければいい、と答えたコービン。
労働党に失望していた私の心に希望の火が灯った瞬間です。

労働者階級、貧困層を国全体で支えようというコービンの姿勢に共鳴したのは若者たち。
今回、学生の圧倒的な支持を得て、99年間ぶりに保守党から労働党に変わった選挙区もありました。

『レ・ミゼラブル』にも貧しき者たちのために戦う学生たちが描かれています。

ユーゴーは成功した裕福な人でしたが、弱者、そして弱者のために戦う若者を書き続けました。それが彼なりの理想への戦いだったのだと思います。

原作も繰り返し読んでいたのですけれど……
民主主義を消化しきれていない日本という国の若者だった23年前の自分が、あの頃どこまで理解してレ・ミゼラブル、悲惨な人々を演じていたのだろう、今もレ・ミゼラブルのために一体どれだけのことをしているのだろう、と自分に問いかけずにはいられません。

1994年
IMG_9587.JPG


1997年
IMG_9588.JPG


2007年
IMG_9586.JPG

『ハムレット』大千穐楽8月15日 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。