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『ハムレット』大千穐楽 [舞台]

日本時間の26日、『ハムレット』は無事に大千穐楽を迎えたそうです。「そうです」と言うしかありません、何しろロンドンにいますから。
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舞台に立つ側だった時には気付きませんでしたが、初日が開いて去る側は寂しい。

映像では役者の仕事が先に終わり、監督が編集等の仕上げ作業を行います。役者が懸命に演じても、最終的にはカットされたり、相手役の顔だけだったり、とあくまで監督のものですが……
舞台は初日が開いたら役者のもの。毎回観客の目の前で生で演じる、そこに映像の仕事では味わえない醍醐味があるわけです。演出家の意向を踏まえるか踏まえないかは本人次第(笑)。

新年早々の記者発表に続く翻訳確認作業、そしてまだ寒い2月半ばから始まった稽古。これらが遠い昔に感じられます。初日が開いて私はロンドンに戻り、夫J はすでにオペラ2作品を手がけ、とまったく違う世界におりましたが、その間も『ハムレット』は続いていたのです。

それも昨日で終わり。役者、そしてカンパニーをしっかり支えてくださったスタッフの方々へと思いを馳せました。本当に本当に素敵な人たち。写真は美女二人と。
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早くにカンパニーを去った身ではありますが、この作品に費やした準備時間は膨大なものでした。時間だけは誰よりも長いかも、その期間は1年以上になります。

まさかシェイクスピアを、まさか『ハムレット』を原語で読むことになろうとは!
英語の勉強を始めた中学生の自分に教えてあげたい。

夫J は勿論のこと、偶然にもカンバーバッチ『ハムレット』の演出助手となった継子S なども引っ掴まえて、ひたすら質問、議論を繰り返す毎日でした。
もっとちゃんと勉強しておきなさい、と中学生の私に言ってあげたい。

日本に来てからの困難も続きました。様々な価値観、文化の相違、乗り越えるべき壁は高くて。

それに追い討ちをかけるように、私生活も試練を突きつけてくる。

その結果……
髪は伸び放題(←ってもともと無精で美容院に行かない)。
白髪も増え放題(←でも無精だから染めない)。

子供達三人と帰ったロンドン・ヒースローで、入国審査の係員に
「あなたたちの親はどこ?」
と聞かれた時には、
「私だよー、この白髪が見えんかーい、『ハムレット』白髪がー」
と叫びたくなりました。

いまだにイギリスでは子供扱いという悲しさ、『ハムレット』をやった大人なのに。

けれども、そういう困難に向き合ったときにこそシェイクスピアの美しく根源的な言葉が心に響いてくる。

多くを学び、感じ、何よりも素敵な出会いや思いに溢れる充実した日々でありました。

唯一お役に立てたのは、稽古中に着用していたスカーフだという……舞台上のデザイン(カーテン等のファブリック)に採用されました。
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