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ラブレター<後半> [舞台]

間が空いてしまいました。

突然右肩を襲った激痛。起きていても寝ていても痛い。右利きなので、書き物どころか全ての事が出来なくなり、左手もその右手を支えることに使われるのみ……そして夜は痛みで眠れない……

ジムにエアロビクス的なダンスをしに行ったら、いつものインストラクター(小柄な女性)が休暇を取っているからと、代行の男性(ムキムキ系)が現れました。エアロビクスは僕の専門じゃないからねって、普通だったら代行は同系統のインストラクターが来るものではないの?という皆の疑問には耳を傾けず、いきなりやらされた重量挙げ。それが原因?

もしかしたら玄関まで届けられた1袋10kgの薪を80袋、地下室まで運んだせい?
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あるいはパソコンに向かって長いラブレターを書いたから?

でなければただ単に年齢?

相変わらず不精な私、動かさなければ治るはず、と病院にも行かずに三日間痛みと戦いながら安静にして……ほぼ治りました。一体何だったのでしょう。

というわけで遅れてしまったラブレターの後半。この『十二夜』で初めて知り合った10人です。

<音月桂> 桂ちゃんこと音月桂ちゃん。実はロンドンに移り住んでから宝塚に触れる機会が無かったため、ここ10数年間の宝塚の役者さんたちをまるっきり存じ上げませんでした。宝塚トップだった方、という予備知識だけで今回初めて会った桂ちゃん、正直言って驚きました。それくらいナチュラルな女性だったからです。本人は「女になる努力をしているんですー」と口にするも、宝塚時代から彼女を知るヘアメークのEitaさんは「本当に男の子だったんだからー」とおっしゃるも、ちょっと信じ難いほど。何人も見てきた宝塚出身の方たちの中でも、これだけその香りを漂わせていない人も珍しい(と私は思いました)。けれどもセバスチャンを演じるときの、その男っぷりときたら!これだけ自然な女性で、尚且つ世界に類を見ない「女が男を演じる技術」を持っているのなら、彼女の可能性はどれだけ大きいのだろう、と感嘆せずにはいられませんでした。宝塚の方達の凄いところは、きちんと舞台人としての訓練を受け、そして休みなく舞台に立ち続け、とことん舞台を知り尽くしているところにあると思います。一朝一夕で舞台に立つ人とは比較にならないテクニックを持っているのです。人間として真っ直ぐで、瑞々しい感性を持ち、何でも可能な桂ちゃん、これから多くのジャンルに挑戦するでしょうが、舞台もずっとずっと続けていってほしい!ちなみに桂ちゃん、こちらも可笑しくなるほどの笑い上戸です。

<山口馬木也> マッキーこと山口馬木也さんは、その男前の外見と演じているアントーニオという役柄もあって、多くの女性のハートをがっちり掴んでおります。が!本当は本当は!大変お茶目な方なのです。カンパニーのマスコットのような?方なのです。いつ見ても、所構わずピルエットの練習。不安定な様子でクルッ、クルッと回っているので、何故?と聞くと「皆さん綺麗に回っていらっしゃるので僕もやりたいなと思って……」。でも、その皆さんはダンサーですから! それにダンスのレッスンでなく、いきなりピルエットの練習ですか?!素敵です。履歴書には洋画学科卒業とありましたし、殺陣はお得意だし、多くのことに興味をお持ちなのだと思います。そんな情熱的な性格が舞台上にも現れていますね。今後も様々な作品でご活躍なさることと思います。丁寧な態度、真正面から人を見据える目が魅力的なマッキー、もう軽々と3回転ぐらい回っている頃かなー。

<内田伸一郎> ウッチーこと内田伸一郎さんが自由劇場のご出身だと知ったのは、稽古中のこと。’94の『上海バンスキング』ラスト公演観ています!と言ったら、ウッチーさんも出演していらしたとのこと、わぁっと心の中で盛り上がってしまいました。自由劇場をよくご存知の方なら当たり前だろう、とおっしゃるところでしょうが、世代的にちょっとズレていて……’94の『レ・ミゼラブル』で共演した笹野高史さんにお誘いただき、あの公演を観ることができて本当に幸運でした。出演者が楽器を演奏するのが印象的だった舞台、ウッチーさんも今回の稽古場でギターを爪弾かれたり、ピアノの前で訳詞作業をしている私に質問をしてこられたり、かなり音楽に詳しくお好きなご様子。稽古中に挟まれるコメントは面白く、旅公演でヨーロッパを廻られたエピソードは興味深く、もっとお話する時間があればと悔やまれます。司祭トーパス、セリフは本来一箇所なのですが、色々な場所に登場なさって、重要な役割を果たしていらっしゃいますね。今後も色々な役柄を拝見したいです。

<佐々木誠二> 佐々坊こと佐々木誠二さんも低音の美声を稽古場に響かせていらっしゃいました。その低い声と、ちょっと強面風な容貌から受ける印象とは裏腹に、大変繊細でシャイな方。劇団昴に所属、熱心に細かい点までお芝居を追求なさっていました。美しい長髪を後ろに束ねていらっしゃる佐々坊さん。その髪に関して、ジョンがヘアメイクのミーティングで、「彼は髪を染めているだろうから、それを止めてもらえば良い感じに老け具合が出るのでは」なんて言ってしまったから大変。その旨を伝えられた佐々坊さんが私のところへいらして「実は染めていないんですよ。これは自然な黒髪なんだ、ってジョンさんに伝えていただけますか」って。「ごめんなさーい、ジョンはきっとその美髪に嫉妬しているんです!」と慌てる私でした。佐々坊さんが師匠と崇めるのはRADA(イギリス王立演劇学校)の校長だったNick、共通の知人発見です。石川禅さんとは学生時代の知り合いだとか、色々な繋がりがありますね。暇があるとダンベルで鍛えていらっしゃるように見えましたが、あれが黒髪の秘訣でしょうか? しかつめらしいヴァレンタインを好演なさっています。

<キムスンラ> スンラさん!スンラさんと言ったら笑顔が思い浮かぶぐらい、いつも素敵な微笑みを絶やしません。お仕事をして来た地方の銘菓を稽古場に差し入れ、それを熱心に勧めてくださる(本当に美味しい)姿が印象的でした。ノートを聞く際も真面目で熱心(でも微笑みは絶やさない)、でもイザ出番となると、「あれ? スンラさーん、スンラさーん、どこですかー?」本当に愛すべき方です。舞台上では、顔に傷のある役人を権威を持って演じていらっしゃいますが、柔和なパーソナリティのせいか、舞台裏では傷が冗談に見えます。劇団四季出身、残念ながら今回の作品で披露されることはありませんが、素晴らしい歌唱力の持ち主です。若々しくて年齢不詳、でも同じく若々しく年齢不詳の禅さんと誕生日がほんの数日違いという噂です。その時期はきっと温和な星回りなのですね。不思議面白優しいスンラさんでした。

<河野しずか> しずかさんは物腰が柔らかく優雅な女性です。話される言葉もその物腰と同じく、優しく響きが美しい。劇団民藝に所属していらっしゃるしずかさん、そのお名前通り静かな口調で熱く新劇を語られていました。私はいつもスタッフのデスクに座り、口を開くときはジョンの通訳として彼の言葉を話すという状況でしたから、稽古場で役者の皆様と私的な時間を持つことはなかなか難しい状況でした。が、しずかさんは毎日のようにフッと近くにいらして何か会話をしていってくださる、それに癒されておりました。サー・アンドルーを嗜めたり、オリヴィアにマルヴォーリオのことを思い出させたり。そういう場面でのしずかさんが美しくて大好きです。「新劇も観てくださいね」とのこと。はい、参ります!

<真瀬はるか> マナティこと真瀬はるか嬢、宝塚で男役だったカッコイイ女の子です。昔ながらの日本人体型な私は、桂ちゃんやマナティには目を瞠りっぱなし。ダンサーらしく二番の足で歩く後ろ姿も颯爽としていて。早いうちに宝塚を出る決心をしたマナティ、色々と考えた結果なのでしょう。意志を持って前進している姿が、歩く姿勢の良さとマッチしています。今回のプロダクションは、彼女なしではあり得ませんでした。それくらい見事に役目を果たしてくれています。青山さん演じるフェイビアンとマナティ演じるお小姓のペアも可愛い。で、男の格好ばかりしていますが、実はグラマーで女らしいことも私の目は見逃してはいません。私の母の友人にして我がピアノの恩師の友人の友人がマナティのお母様?という情報があって、そうしたらマナティも「そうそう、私の母の友人の友人が麻緒子さんの…………」って。世間は狭いのだか広いのだか分からない情報でした(笑)。

<扇田森也> シニアこと扇田森也くん。「しんや」という発音がジョンには「しにあ=シニア=senior」と聞こえるのだそうです。そしてまた同じカンパニー内に、「じゅんや」つまり「じゅにあ=ジュニア=junior」も存在するので、ジョンは稽古中ずっと二人を『Senior』『Junior』と呼び続けていました。年齢も森也くんが上だしピッタリだ!と。このことは余程面白かったらしく、ロンドンに帰っても話題にし続けている……というのは余談ですが、新国立劇場演劇研修所の出身で、稽古場では物静かで、でもいつも熱心に観ていて、アンダースタディとしての自主練も怠らず、ヒョロッと背が高く、お昼になると巨大なキンピラ入りお握りを頬張る、そんな森也くんは独特の存在です。男装したヴァイオラ、シザーリオにオーシーノ公爵のお気に入りの地位を奪われるも、それはそれで仕方ないさ、といった様子のキューリオは好感度大、森也くんならではのキャラクターになっています。

<生島翔> 翔くんはダンサーらしい。というのは稽古中やノートを聞く時に、足が何となくステップを踏んでいるので気づきました。翔くんはアメリカで学生時代を過ごしたらしい。というのは彼の話す流暢な英語がアメリカン・アクセントなので気づきました。翔くんは某アナウンサーの息子さんらしい。というのは、お父様自身がアフタートークショーでマイクを通してそうおっしゃっていたので間違いありません。そんな翔くん、討論で積極的に意見を出したり、頭も身体も切れの良い若者です。今回の舞台は良い機会だし、ギターも再開しようかなと言っていました。このカンパニー、ギターを弾ける人の率が高いです。ダンス以外の舞台に踏み出したのは最近のようですが、海外での修行を生かして既に色々と活躍している様子、これから先も大いに楽しみですね。

<平野潤也> カンパニー最年少、まさにジュニアな潤也くん。存在の仕方も一番現代風なので、『演劇集団円』の所属だと聞いた時にはびっくり。私の中の『円』は芥川比呂志さんや岸田今日子さんというイメージ、そして実際に存じ上げた方は南美江さんや佐古正人さん……って私の年齢が分かってしまう話でした。そうですよね、老舗の劇団にも次から次へと若い世代が入って継続していくわけです。このカンパニーも潤也くんのおかげで若さがあるのです。背が高くて華も添えてくれていますし。海外の戯曲を日本人が西欧スタイルでやると、その文化背景の違いを理解して表現することに加えて、似合わない衣装を着こなすという難題も待ち構えています。けれども今回の『十二夜』は背が高い男性が多いわ、ダンサー(彼らは姿勢や仕草で着こなすことができます)が多いわ、とにかく皆さんが見事にヨハンのデザインした衣装をものにしていらっしゃいます。ミュージカルでもないのに歌える方ばかりですし。歴史ある劇団、そしてこうした外部出演での経験を踏まえて、潤也くんも更に成長してくのでしょう、これまた先が楽しみです。
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