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『十二夜』 [舞台]

来年(2015年)3月、シェイクスピアの『十二夜』が日生劇場にて上演されます。夫ジョンの演出です。
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シェイクスピア。
この名前を聞くと、我々日本人は何だか畏まってしまいがちですが……
かく言う私も、実は苦手だったのです。作品を読み、舞台は数多く観ていましたが、言語の仕組みの違い、西洋式論理、歴史的背景の知識不足、といった理由から、これは私の世界ではない、日本人がやるものではない、と撥ね付けていた時期がありました。

そのような私が英国に住むことに。
シェイクスピアの生地で実感したこと、それはシェイクスピアがイギリス人の一部になってしまっているということです。学校に通う子供たちの国語(英語)教育とは「切っても切れない」関係であり、英文学を開けばギリシャ神話や聖書と並んで数多くの引用がなされ、劇場では常に幾つものプロダクションが上演されていて、それ以外の分野にも大きな影響を与え続けている、それがシェイクスピアなのです。

英語の理解が深まり、英国人、英国の歴史や地理に触れ、そして何よりも自分たちのものとして消化している役者たちがオリジナルの言葉で演じる舞台を観ているうちに、私のシェイクスピアへの頑なな拒絶が和らいでいきました。

でもまだ『シェイクスピアと日本』という点に於いて疑問は残ったままで……

そんな疑問が氷解したのは、2007年にジョンが初めてシェイクスピアを日本人キャストで演出した『夏の夜の夢』の時です。
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撮影:谷古宇正彦

シェイクスピアが書いたオリジナルの言葉は勿論美しいけれど、内容そのものが世界共通なのだからと、他言語での上演にも抵抗が無いジョン。一つ一つの台詞の意味を掘り下げ、必要なときは翻訳を修正していくのを間近で見ていました。それを役者に伝えて出来あがった作品は、堅苦しいものでも理解不能なものでもない、ただ心から共感し楽しめる時空間だったのです。私はスウェーデンで同じプロダクションを観ていますが、言語の違いを越えて、それは同じことを伝えていました。

そしてもう一つ、黒澤明の『蜘蛛巣城』との出会いからも大きな影響を受けました。見事なアダプテーション、数多く映像化されているシェイクスピアですが、私はこれが最高傑作だと思っています。シェイクスピアの普遍性を証明していました。

『十二夜』は人間の素晴らしさ、面白さ、残酷さ、悲しさ、愚かさ……多くの要素が絡み合った作品です。複雑なジェンダーが愛を一筋縄ではいかないものとし、友情でさえ精神的主従関係によって生半可なものではなくなる。そんな世界の現実を写しとっています。

今回私は演出家アシスタントとして参加させて頂くことになりました。
現在猛勉強中ですが、及第となるまでには時間がかかりそう。けれども、シェイクスピアを楽しめる今の私にとっては素晴らしい時間となっています。
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